次代への羅針盤
「知識」のみではいけない、「知恵」が大事
岡本佳男
急速に進化する中国の化学
そうしたこともあり、中国の学術研究は長足の進歩を遂げました。1995年頃、私が関係するキラル分離の分野で中国の論文はほとんどありませんでした。しかし、2005年になって、中国の論文は年間400報くらいに増加し、日、米、独の各国の論文数に迫りました。さらに、その後も中国の論文数は増え続け、中国の論文のシェアは30%を超えているでしょう。また数が増えるだけではなく、質もよくなっています。レベルの高いジャーナルに発表される中国人の論文は、着実に増えています。
また、中国はお金が潤沢にあり、研究環境も整ってきました。そういった点も、進歩を後押ししているのでしょう。
ちなみに、大学の研究室は日本とシステムが異なり、日本のように教授の下に准教授や助教がいません。教授からすると研究室の運営も学生の面倒を見るのもすべて自分でやらなければならないので大変ですが、教授が学生と直接やりとりすることにはよい面もあると思います。
とにかく、日本と比べると国もアカデミアも元気です。日本の高度成長期に似ているような気もします。