次代への羅針盤
「知識」のみではいけない、「知恵」が大事
岡本佳男
必死に勉強する中国の学生
現在、私は研究の拠点を中国のハルビン工程大学に置いています。新型コロナウイルスの感染拡大のため、ここ数年は中国に行けていませんが、オンラインでのやり取りはずっと続けています。
ハルビン工程大学と関わりを持つようになったのは、2004年に名古屋大学を定年退官してからのことです。ハルビン工程大学から北海道大学に留学していた中国人学生がいて、その指導教授が私の友人だったことがきっかけでした。「退官したのならハルビン工程大学を少し手伝ってほしい」と頼まれたのです。
初めて行った頃は研究環境もあまり整備されておらず、先生方のレベルも決して高くはありませんでした。けれども、学生はやる気に満ち溢れていました。
これは今でもそうだと思いますが、中国ではローレベルからハイレベルにステップアップする確率の高い方法は、有名大学に行くことです。だから中国の学生は皆必死で、日本の学生よりはるかによく勉強します。高校生も、レベルの高い学校では朝の7時すぎには登校し、夜遅くまで勉強します。親も、私たちから見ると「よくやるな」と思うくらい教育熱心です。一人っ子政策以降、ますますその傾向が強くなったようです。中間所得層が育ってきているため、親は子どもにかけるお金を惜しみません。