次代への羅針盤
若さゆえの荒々しさがほしい
木野邦器
生命の神秘を解き明かしたい
私の研究の一つに、アミノ酸がつながったペプチドやたんぱく質の構造と機能との関係を探るものがあります。地球上に存在する生命体を構成しているアミノ酸は、ある一定の光学活性(キラリティ)を有していて、偏った世界を形作っています。なぜそうなったのかはまだ解明されていませんが、私たちは最近の研究で、生命の厳密な制御システムの裏側に実は極めて曖昧な部分があることを見出し、その現象を利用してキラリティを自由に制御できる画期的なペプチド合成法の開発に成功しています。現在、その曖昧さを他の生命システムにも求め、その意義と生命進化の可能性に着目した研究をしています。微生物の機能を高度利用する応用研究の中から見出された新しい展開ですが、こうした研究を通して、生命の神秘の一端を解き明かすことに少しでも貢献したい。それが私の今の夢です。
多様な価値観に出会うことが大切。
木野邦器[きの・くにき] 1955年、札幌市生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業、同大学院理工学研究科博士前期課程修了。1981年、協和醱酵工業入社。1999年、同社を退職し、同年4月、早稲田大学理工学部教授(現職に至る)。その間の1987年には協和醱酵に在籍しながら工学博士号を取得。2014年より早稲田大学理工学術院総合研究所所長を兼務。2010年より3年間、国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センターシニアフェローならびに2022年から同機構プログラムオフィサーを兼職。文部科学省中央教育審議会専門委員、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構評価部研究評価委員長、日本生物工学会会長、バイオインダストリー協会理事などを歴任。趣味は温泉めぐりと食べ歩き。
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