ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

もっと異分野にも出ていきなさい

加藤隆史

大学と企業が補い合う

 異分野の人が集まると、アイデアがどんどん発展して、とてもうまく仕事や研究が進むことがよくあります。水圏機能材料のプロジェクトも異分野の研究者が集まってさまざまな展開が生まれています。これからは異なるものを持った人による共同研究やコラボレーションが大事になると思います。それは大学と企業との共同研究にも当てはまるでしょう。同じ研究者であっても、大学の研究者と企業の研究者とでは求められるものが違います。お互いの違いを理解し合い、相互の力を補い合うスタンスで取り組めば、きっとよいシナジーが発揮されるはずです。

 ですから企業の方もぜひ積極的に、自分の専門分野とは異なる人に「意識と自分を持って」会いに行ってください。以前は学会にも企業の方がたくさん来ていましたが、最近は余裕がなくなったのか少なくなったように感じます。また経営者の方には、さまざまなタイプの研究者をそろえるようにしていただきたいです。

 研究は始めた当初は全体がよく見えないので、あまり面白くないかもしれません。けれどもある程度進むと、急に俯瞰的に見える瞬間がやってきます。そうすると研究がにわかに面白くなってきます。企業の研究者は自分で研究テーマを選べないことも多いでしょう。しかし、たとえ与えられたテーマでも面白さを発見することはできますし、自由度があまりないところでもやれることは必ずあります。

 若い研究者の方たちは、簡単に諦めず、ある一定期間はしぶとく集中して取り組むことが大事です。そうすればきっと研究が面白くなる場面がきますし、研究が面白くなればずっと続けられるようになります。まずは、やってみないと自分に向いているかもわからないでしょう。そしてそれは必ずよい結果や明日につながります。筋道がなかなかわからないが、突然視界が開ける山登りのような感じでしょうか。

3年前に高校生を招いた授業の様子。全国から生徒を招いて液晶についての授業を行い、研究室の見学も行った。

 日本の化学は大学も企業もレベルが高いと考えています。まだまだ捨てたものではありません。私はこれからも産学連携や共同研究、学際的な研究・交流などに積極的に取り組んでいくつもりです。

簡単に諦めず、しぶとく集中して。

加藤隆史[かとう・たかし] 1959年、広島県生まれ。東京大学工学部合成化学科卒業、同大大学院工学系研究科合成化学専門課程博士課程修了、工学博士。アメリカ・コーネル大学博士研究員、東京大学工学部合成化学科助手、東京大学生産技術研究所講師、同助教授、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻助教授などを経て、2000年より現職。日本液晶学会会長、高分子学会会長などを歴任。2021年には紫綬褒章を受章。広島大学附属高校時代には山岳部に所属。自然と触れ合いながら山を歩き、北アルプスなどで自然を満喫したという。中学生や高校生に研究の楽しさを伝える出張授業・訪問受け入れ授業を30年間続けている。

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