ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

才能ある研究者は国の宝です

松永 是

失敗が資質を磨いた

 研究者にとっては、研究を楽しめることが必要です。もちろん大変なこともたくさんありますし、失敗することもあるはずです。私も学部生のときの卒業研究では1年間、ほとんど失敗の繰り返しでした。当初の計画とは違う結果が出れば、がっかりするかもしれません。しかし、その失敗が新しい発見につながり、思わぬ成果に結びつくこともあります。実際、私は失敗ばかりしていたからこそ、物事をいろいろな角度から見る資質を養うことができたのだと思います。

 今の若い研究者たちは、常勤のポストが少ない厳しい環境に置かれています。博士課程に進む学生が減っているのもそういうところに大きな要因があるのでしょう。

 日本は、科学技術が発展を支えてきた国です。次代を担う才能のある若い研究者は国の宝です。国も社会も私たちも、もっと彼ら彼女らを大事にしなければいけません。国もそういうことに気がつき、次期の科学技術計画では基礎的な研究の予算を増やすと言い始めています。

 確かに現状は厳しいでしょう。しかし、研究は楽しいということを信じ、科学技術こそが未来を拓くと信じ、自分たちがそれを担うのだという自負を持って科学研究に取り組んでほしい。若いうちからあまり研究の範囲を狭くしすぎず、いろいろなことに興味を持って新しい分野を切り開いていってほしい。私は若い人たちに、そういう期待をしています。

科学技術こそが未来を拓くと信じ、自分たちがそれを担うのだという自負を持って研究に取り組んでほしい。

松永 是[まつなが・ただし] 海洋研究開発機構 理事長 1949年、千葉県生まれ。東京工業大学工学部合成化学科卒業。同大大学院総合理工学研究科電子化学専攻博士課程修了。工学博士。同大助手、東京農工大学工学部助教授、同教授などを経て2011年、同大学長就任。2019年9月より現職。趣味はスポーツ全般。若いときは微生物の採取も兼ねて、よくスキューバダイビングをした。数年前に鼓膜の再生手術を受けており、水圧で耳の鼓膜が破れたときには「プシュッ」という音が聞こえたという。1996年に「ω3高度不飽和脂肪酸合成遺伝子の検索とそのクローニングによる新規藍藻の作成」によって松籟科学技術振興財団の研究助成を受賞。

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