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次代への羅針盤

次代への羅針盤

人の倍の努力をするそれくらいの覚悟を持ちなさい

若い研究者のアクティビティが落ちている。柴﨑正勝氏はそれを強く危惧し、日本の有機化学界の現状を直視すべきだと喝破する。

Masakatsu Shibasaki

柴﨑正勝

公益財団法人微生物化学研究会理事長 微生物化学研究所長

研究の質と組織の規模は関係ない

 2018年3月、「Nature Index 2018 JAPAN」により、微生物化学研究所(微化研)がすべての日本の研究機関の中で第1位に選ばれました。自然科学分野において高品質な科学論文を最も高い割合で発表した研究機関と認められたのです。『NatureIndex』は『Nature』誌の特別企画冊子で、主要な科学誌に発表された論文をもとに、世界の研究機関の貢献度を、国や研究分野、研究機関ごとなどに集計したランキングを毎年発表しています。『Nature Index』は同じ号で、日本からの高品質な科学成果の発表が減少し続けていることも報告していますが、そうした状況下で微化研が第1位と評価されたことは大変光栄なことです。

 微化研は、スタッフ数120名ほどの小さな研究所です。しかし、長年にわたり日本における抗生物質研究をリードしてきた歴史があり、現在も微生物・微生物生産物やその関連物質に関する幅広い研究を行い、優れた実績を上げています。微化研のような小さな研究所が質の高い研究をしていることが『Nature』に認められたことは、日本にとっても大いに意義のあることだと思います。

 私が東京大学の大学院生だった頃、微生物や薬学の研究をしている学生にとって微化研は、近寄りがたささえ感じる研究所でした。しかし9年前、私が東大をリタイアして微化研に来ることになったとき、研究室の助教や学生は誰ひとりとして微化研のことを知りませんでした。この研究所のネームバリューを過去のような輝かしいものにすること、それは私の使命の1つであります。

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