次代への羅針盤
自分の良さを伸ばせばいいのです
山本 尚
日本人は感覚こそが優れている
そう思うようになったのは、特に何かきっかけがあったわけではありません。ただ、なんとなくです。
実はこの「なんとなく」が大事なのです。フィーリングとか感覚と言ってもいいでしょう。日本人はこういうとき、論理的結論でないといけないと思いがちです。私に言わせればそれは大間違いです。日本人はフィーリングに優れているのであり、そこをもっと誇りに思うべきです。論理的な人などそうはいません。
ただ、日本人はすごく内向的で、集団社会をつくろうとします。だから他の人と同調しようとします。そこが日本人の弱いところです。
イノベーションには、破壊的イノベーションと持続的イノベーションがあります。それまでの技術を否定するのが破壊的イノベーションで、それまでの技術を改良して行うのが持続的イノベーションです。世の中を大きく変える力を持つのは破壊的イノベーションです。だから何事も隣と同じようにしようとする傾向の強い日本では、破壊的イノベーションが育ちにくい。新しいことにチャレンジしないと、世の中を大きく変化させるような新しい技術は生まれません。
「intelligence」と「intellect」は、日本語ではどちらも知性と訳されます。しかし、昔の規範をもとに新しいものをつくるのが「intelligence」で、昔の規範を否定してそこから新しいものをつくるのが「intellect」です。日本の大学では「intelligence」ばかり教えています。問題の解き方は教えるのに、問題の出し方は教えない。それでは破壊的イノベーションがなかなか生まれないのも当然です。