ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

自分の良さを伸ばせばいいのです

40年以上にわたりルイス酸触媒の研究を続けてきた山本尚氏は昨年、有機化学分野で最も権威あるとされる「ロジャー・アダムス賞」を受賞した。生意気でいい、とんがっていていい。全身全霊をかけて新しいことにチャレンジする。そんな若手研究者の育成にも取り組む山本氏は、生涯現役を標榜し、研究への意欲は今なお少しの衰えも見せない。

Hisashi Yamamoto

山本 尚

中部大学総合工学研究所長、分子性触媒研究センター長、教授

ペプチド系医薬品につなげたい

 無機のルイス酸触媒はもともと有機合成で使われていましたが、私はデザイン型ルイス酸触媒の研究を始めました。ルイス酸触媒をデザインすることで、意図したとおりに反応を制御することができるのです。今もルイス酸の研究をしていますが、特に触媒的なペプチド合成の研究に力を入れて取り組んでいます。こういう研究は世界で初めてでしょう。不思議なことに今まで誰もやってきませんでした。難しいという先入観があったのかもしれません。

 ところがふたを開けてみたら、全然難しいことはありませんでした。従来はカルボン酸の活性化でペプチドをつくり、分子量が大きくなって精製するのに時間もコストもかかりすぎていましたが、ルイス酸を使ったことでラセミ化の問題も解決でき、コストは1万分の1から1千分の1くらいに減りました。

 20~30年後、医薬品は全部ペプチド医薬品になるでしょう。副作用がほとんどない、切れ味のいい医薬品ができるお手伝いをしたいと思っています。

 海外に比べると日本の医薬品メーカーは一回りも二回りも小さなサイズです。ペプチド医薬品の開発でせめて1社くらい、世界トップの医薬品会社ができないか。それが私のささやかな夢です。

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