ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

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人体は小さな化学プラント

酒井清孝

勉強と研究は全く逆の行為

 かつて人工臓器は、移植医療が実現するまでのつなぎ役だとみられていた時期がありました。けれども日本ではドナーが少なく、欧米のような生体移植の広がりはみられません。一方でこの間、人工腎臓は着実な進歩を遂げてきました。慢性腎不全になりながら人工透析で40年以上、生存している患者さんもいます。

 再生医療の登場により、人工臓器は影が薄くなったという人もいます。しかし、細胞から再生した平たい布のようなものを心臓に貼ったりすることはできるでしょうが、3次元の臓器を再生させるのは難しいのではないでしょうか。できるとしてもまだ相当な時間がかかるでしょう。それまではやはり人工臓器の研究は必要ですし、社会的な意義も歴史的な使命もまだ終えていないと思います。

 勉強というのは、すでに確立されている知識を身に付ける受動的な行為です。それに対して研究とは、まだ確立されていない知見を見つけ出し、自分で確立する能動的な行為です。その意味で勉強と研究は全く逆の行為だと言えます。勉強はできても研究では成果を上げられない人がいるのはそのためです。研究に必要なのは、自分で考える知力、知恵です。知力を鍛えるには、若いときに社会に出てさまざまな人とコミュニケーションすることが役立ちます。知力を鍛え、信念を持ち、これだというテーマを見つけたら何度失敗しても諦めずに必死で食らいつくように研究する。いつの時代も新しい世界を切り開くのは、そういう研究者なのです。

知力を鍛え、信念を持ち、これだというテーマを見つけたら何度失敗しても諦めずに必死で食らいつく。

酒井清孝[さかい・きよたか] 早稲田大学 名誉教授 公益財団法人 松籟科学技術振興財団理事 1941年、東京都出身。早稲田大学大学院理工学研究科応用化学専攻博士課程修了(工学博士)(城塚正教授指導)。 静岡大学工学部助教授、早稲田大学理工学部応用化学科助教授を経て1978年、同大教授に就任。現在、同大名誉教授、東京電機大学工学部応用化学科非常勤講師。クリーブランドクリニック人工臓器研究所客員教授、テキサス大学客員教授、東京大学非常勤講師などを歴任。公益財団法人 松籟科学技術振興財団理事、 第34回日本人工臓器学会大会長、日本人工臓器学会名誉会長なども務める。夫人とともに愛車を駆ってドライブするのが趣味。

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