次代への羅針盤
人体は小さな化学プラント
酒井清孝
研究者の作法
人工臓器の研究をやめろとおっしゃった先生以外にも、私には何人かの恩師がいました。そうした恩師の先生方がおっしゃったいくつかの言葉を、私は大事にしてきました。
ある先生は、地道な研究をしない者はダメだとおっしゃっていました。何か脚光を浴びているテーマがあると、自分の研究テーマとはズレているのにそちらへ行ってしまう。そういう態度は研究者としてみっともない。これだという信念を持って自分の道を進めと、その先生はよくおっしゃっていました。私はそうしてきたつもりです。
別の恩師は、締め切りは必ず守れといつもおっしゃっていました。学生を指導するときも、たとえレポートの内容がよくても締め切りを守らなかったら評価するなと強く言われました。私はこの言葉も実践してきました。
私自身は、学生に対し、仕事はすぐやりなさいといつも言っていました。課題を出すと、締め切りの間際になってようやく始める学生がいましたが、それではいい仕事ができるはずはありません。早く取り掛かり、早く終えればストレスからも早く解放されますし、時間に余裕がありますから、書いたものもじっくり推敲することができます。
要は、アカデミックな研究者にもそれなりの作法がある、ということです。