ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

最後までやり抜く強い意志で、高みを目指して欲しい

村井眞二

退路を断って研究に取り組む

 難しいテーマの研究をしていて、なかなかうまくいかないと、もう少し簡単なテーマの研究に移りたくなるものです。しかしそこに逃げ込んだらいけません。私は常に退路を断って研究に取り組みます。だからとにかくその研究をするしかない。もちろん失敗の連続です。でもそうした無数の失敗を恐れない強い心が必要です。

 大学4年生は、初めて研究室に入ると何をしていいか分からず戸惑います。そういう学生に対して多くの研究室は、訓練のために小さなことをいろいろやらせます。でも大阪大学時代、私の研究室では第一級の研究に4年生を参加させました。それも論文を投稿する直前の大詰めの段階でです。そういう環境でこそ、学生は研究するための作法を身に付けるのです。もちろんそれが第一級の研究であることを、学生はよく分かっていません。しかし論文が発表され、そこに掲載されている自分の名前を見て、学生も「俺はすごいことをしたようだ」と思うのです。

 いい料理人を育てようと思ったら、子どもの頃から一級のおいしい料理を食べさせないといけません。本物の味を知ったら、安物の味では満足できなくなります。それと同じこと。早い段階から第一級の研究に参加すれば、高い目標を狙おうという思いが共有され、それが研究室全体の財産になり、文化ができるのです。

 また私たちの研究室では、こんなことができたら面白いというナイーブな発想をまずは実際に実験で試してみるという「実験先行型の研究」と、こういう仕掛けでこういうことをしたらこうなるはずだと徹底的に考え抜いたうえで取り組む「思考先行型の研究」と、2つのタイプの研究を同時に走らせていました。研究室のメンバーはその両方を見ているため、それぞれのいいところ、悪いところを知り、偏った研究者にはならず、サイエンスの真っ当な作法を身に付けた研究者に育つのです。

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