次代への羅針盤
最後までやり抜く強い意志で、高みを目指して欲しい
村井眞二
トップ化学者を集めた箱根会議
2004年、科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センターの上席フェローだった私は、当時、京都大学の玉尾皓平先生にお願いし、日本のトップ化学者を集めた箱根ワークショップを行いました。いわゆる箱根会議であり、ここから生まれたのが、希少元素を使わずに、他の元素でその機能を置き換えようという元素戦略でした。この元素戦略は、元素も将来は不足してくるからその対策を考えることと、まだ知られていない元素の特性を科学的に解明していくことの2つが大きな目的です。現在は産官学が連携する一大プロジェクトに発展していますが、実は当時、協力を呼び掛けた欧米各国はさほどの興味を示しませんでした。ところがその後、尖閣諸島問題から中国がレアアースの輸出を禁止したため、欧米も事の重大性にようやく気づき、日米欧の3極が連携するようになったのです。
レアアースではありませんが、マグロも数年前に国際的な価格が急騰したことがあります。その後、マグロ漁は規制が強化されるようになりましたが、日本が先頭に立って考えないといけないのは、すべての天然資源に関して、廃棄物や精製後のゴミを産出国に廃棄し、いいところだけを消費国に持ってくるという現在の構図はいつまでも通用しないということです。世界各国が同じテーブルについてそういう問題を話し合うべきでしょう。
日本も、海外の資源が欲しければ、そこに行って現地に小学校をつくるところから始める。国と国が友好関係を築き、海外の国が日本に協力的になる素地をつくることから始めないといけないのですが、どうも日本はそういうグランドデザインを描くのが苦手なようです。