ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

研究者はもっと広く世界を見て欲しい

野依良治[後編]

機能するものは美しい

 私は、サイエンスは大変美しく、論理的で面白いと思ってきました。若い頃は好奇心にまかせてさまざまなことを試みましたが、真に基本的なサイエンスの研究をしたいとさまよってもいました。

 生涯の主な研究対象は不斉水素化の触媒の発明でしたが、「研究はみずみずしく単純明快に」というのが私のモットーです。複雑なことは苦手で、単純かつ重要な問題を一刀両断に解決したいと考えて取り組んできました。

 また、「機能は美なり」という言葉が好きです。かつてドイツにあったバウハウス(Bauhaus=1919年頃に設立された工芸・写真・デザインなどを含む美術と建築に関する総合的な教育を行った学校)の標語ですが、機能するものは美しい、美しい形の触媒は必ず有効であるはずという思いが私にはあります。実際、美しい形の触媒を追求してきた直観が結果的に大きな成果に結びつきました。

 研究には知性とともにみずみずしい感性が不可欠だと思います。したがって西洋人とは違う感性を持つ日本人だからこそできる研究があると信じています。私自身、日本人の感性があったから評価される仕事ができたと振り返っています。

 2001年にノーベル化学賞を受賞したのは、学術的成果の評価によりますが、もうひとつ大事なことは、私の研究成果が広く産業界で活用されたことです。「プルーフ・オブ・コンセプト」(POC:Proof-of-Concept=基礎研究の段階におかれている新薬候補物質の有用性・効果が、動物やヒトに投与する臨床実験において認められること)という言葉がありますが、私の研究の科学的な正当性は、産業活用によって証明されたのです。尽力された方々には大変感謝しています。

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