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次代への羅針盤

次代への羅針盤

研究者はもっと広く世界を見て欲しい

野依良治[後編]

このままでは日本が沈んでしまう

 近年は、社会を変えるイノベーションが求められています。米国の工学アカデミーがこう言っています。「世界のリーダーシップに必要なものは、強大な軍需産業でも天然資源保有でもない。先端技術でもない。国家の成功のために最も必要なものは、時代に合う教育を受けた国民をどれくらい確保できるか。そして数百万人もの創造的な個人が起業に成功するように、自由と資金を提供することだ」と。

 米国では若い起業家たちがガレージで夢を育み、ビジネスを始めて大成功した例がたくさんあります。アップルやグーグルもそうです。野心的かつ創造的な個人が起業に成功できるような環境があるからです。非上場で10億ドル以上の市場価値のある企業も80社以上あるそうです。日本にはそういう企業がどれくらいあるでしょうか。これが日米の経済活力の差です。米国のような環境を指導者たちが本気で整えないと、日本は近い将来沈んでしまうのではないかと、私は強い危機感を抱いています。

 未来をつくるのは若い世代、これほど明白なことはありません。彼らが思う存分に力を発揮できる風土をつくることが、即ち輝ける未来をつくることになるのです。

取材後、当社・長谷川社長(写真右)と固く握手を交わす野依氏。

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