次代への羅針盤
ナノセルロースの実用化で日本を資源大国に
磯貝 明
実用化に近づくほどハードルが出てくる
企業の協力もあってこの研究はようやく花を咲かせようとしています。実用化に向けて着実に前進してきたことは間違いありません。しかし、実用化に近づくほど、いろいろなハードルが出てくるものです。本格的な実用化までには、まだ多くの解決すべき課題があります。
新しい材料が現に使われている材料にとって代わるためには、価格が半分、性能が3倍くらいになることが必要です。これからは、ナノセルロースでなければならない独自の用途を開発することが非常に重要になってきます。
たとえば、海水の真水化に使っている中空糸の材料に、ナノセルロースを少量添加すれば、強度が上がります。そうすれば中空糸の素材を薄肉化しても高圧に耐えられ、それでいて脱塩水の生産効率をあげることができるようになるかもしれません。ナノセルロースフィルムはガスバリア性もありますから、酸素を通さないバイオ系フィルムによって、食品の賞味期限を維持したまま、環境に優しい包装材料として利用される可能性があります。自動車のタイヤには今、カーボンブラックが添加されていますが、ナノセルロースに置き換えればもっとカラフルなタイヤが登場すると考えている先生方もおられます。電子材料、塗料、化粧品、接着剤など、ナノセルロースにはさまざまな用途が考えられます。