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次代への羅針盤

次代への羅針盤

理科教育への支援が日本のサイエンスのレベルを上げる

2010年にノーベル化学賞を受賞した北海道大学名誉教授の鈴木章氏。
受賞理由となった鈴木・宮浦クロスカップリングは、1970年代末に開発された後、
医薬品やLEDなどの開発・生産に多大な貢献をしてきた。
研究から離れている今も、若者の理科離れを憂い、
「自分が話すことでサイエンスへの興味を持つようになってくれれば」と、
次世代の育成への尽力を惜しまない。

Akira Suzuki

鈴木 章

北海道大学名誉教授 2010年ノーベル化学賞受賞

日本のノーベル賞受賞者が多い理由

 昨年、3人の日本人研究者がノーベル物理学賞を受賞しました。これで日本人のノーベル賞受賞者は、米国籍の南部陽一郎・米シカゴ大学名誉教授を含めると、計22人になりました。特に今世紀に入ってからは、化学賞と物理学賞で多くの日本人研究者が相次いで受賞の栄に浴しています。

 日本のサイエンスの研究は、非常に高いレベルにあると思います。私は1963年に初めて米国に留学しましたが、そのときは米国のサイエンスが非常に進んでいることに圧倒され、驚きました。しかし今は日本もレベルは高い。もう圧倒されることはありません。

 一方で中国や韓国には、ノーベル賞受賞者がほとんどいません。韓国の高校生の前で講演をしたとき、「韓国のサイエンスはレベルが低いのですか」と質問されたことがあります。しかし、そういうことは決してありません。私は中国や韓国、台湾の研究者とも交流がありますが、優れた研究者はたくさんいます。いい仕事もしています。近い将来、彼らのなかからノーベル賞受賞者が必ず出ると確信しています。

 では、日本はなぜ多くのノーベル賞受賞者を輩出してこられたのでしょうか。

 日本は明治以降、国が科学の重要性を認識し、理科教育を大事にしてきました。報道機関や国民もそれを理解し、サポートしてきました。それは資源のない国としては、必然のことでした。豊富な資源を持つ欧米列強に対抗していくためには、付加価値が高く、つくるのが難しいものです。たとえば複雑な構造を持つ有機化合物や精密機器、そういうものをつくって経済を発展させていくしかない。そのためにはサイエンスに興味を持つ若い有能な人材がたくさん出てくるようにしなければならないからです。100年以上にわたり、日本はそういうことをしてきたのです。

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