研究開発品
製紙用薬品
製紙用薬品では、水性樹脂の合成をコア技術とし、段ボール等に使用される板紙の強度を高めるポリアクリルアミド(PAM)系紙力増強剤、紙や板紙の吸水性を制御して水性インクのにじみ防止や耐水性を付与するロジン系サイズ剤、紙や板紙の表面に塗ることで印刷適性や撥水性を付与する表面紙力増強剤や表面サイズ剤といった、主に製紙工程で使用される機能性薬剤の開発を行っています。紙・板紙生産量の約50%を占める中国と米国、板紙の生産量が増加している東南アジアに適用できる製品や新しい用途の開発を進めています。また、製紙産業で使用されるパルプ資源や水資源の有効利用、廃棄物の削減、環境問題に応える製品開発にも積極的に取り組んでおり、原料となるパルプを生産する工程の操業性や生産性を改善するピッチコントロール剤、脱プラスチックの動きの中で紙製素材の利用を推進できるバリアコート剤の開発も進めています。これら製品の開発を通じて、紙化を望まれるお客様のニーズに応え、紙製素材の普及に貢献しています。
世界の食品包装材料規制に対応する間接食品添加物
海外では食品と接触する紙製包装材料に使用される化学物質に“間接食品添加物”としての認証が必要となっており、日本でも認証制度が整備されつつあります。このため、規制の進んでいる海外の関係会社と協力し、FDA(米国食品医薬局)、BfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)、GB9685(中国食品接触材料法規制)の三法規制に準拠する、安心で安全な製紙用薬品の開発に取り組んでいます。 高分子量且つ両イオン性を有するポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤「ハーマイドT2」(2023年発表)、合成系のアニオン性高分子乳化剤を用いたロジン系エマルションサイズ剤「NeuRoz」シリーズ(2017年発表)は、いずれも三法規制に準拠する製品として世界初です。
紙製素材の利用を推進する水性コーティング剤
プラスチックごみ問題への対策の一つにプラスチック素材の使用量削減があり,バイオマス由来且つ自然環境下における分解性が高いセルロース素材「紙」の活用が注目されています。プラスチック素材の機能を紙素材で得るには,一般的にポリエチレン(PE)などのフィルムによるラミネート処理が施されていますが、リサイクル適性の低さ等の課題があります。 水性コーティング剤「ハイコートBC 」シリーズは、紙素材に耐水性や耐油性、ヒートシール性といった機能を付与します。食品包装材料規制への適用を考慮し、FDA,BfRといった海外の規制にも準拠した安全性の高い製品です。また、バイオマス素材を使用した製品の開発にも取り組んでいます。
工程改善薬品(ピッチコントロール剤)
製紙産業に限らず、CO2排出量削減やエネルギー原単位の削減が求められています。製紙工程における操業性改善に貢献し、生産性の向上やエネルギーの削減につながる製品が工程改善薬品です。 木材パルプ中の樹脂、古紙から混入する糊や粘着剤などの合成樹脂が凝集したピッチは、製紙工程において紙切れや最終製品化率の低下につながります。 このピッチの原因となる樹脂を微細な状態で安定化するとともに粘着性を抑制し、紙に定着させる機能を持つ工程改善薬品がPAM系ピッチコントロール剤「AS」シリーズです。ピッチの粘着性を大幅に抑制することで、国内外にて高い評価を得ています。また、古紙パルプを対象とした製品の開発にも取り組んでいます。
環境改善型薬品(脱墨パルプ用填料歩留り向上剤)
紙の高機能化を目的とする薬品の枠を超えて、古紙の有効利用と製紙会社のゼロエミッション化に貢献できる薬品開発にも取り組んでいます。環境改善を目的とする脱墨パルプ用填料歩留り向上剤「ハリアップAC」は、製紙会社にて排水処理を通じて発生する焼却灰の削減に貢献しています。
(*)紙には、品質向上のために炭酸カルシウムなどの無機物質が添加されていますが、古紙を再生する際に、これらが廃水処理を通じて焼却灰(排水処理汚泥焼却灰)となり、製紙会社での廃棄物発生量の約半分を占めています。