One Hour Interview
皮膚のように柔らかな電子材料を追い求めて
松久直司
ヘルスケア領域で応用探索が進む透明電極
学生が20人というのはずいぶん多いですね。
日本よりも、海外で注目されているかもしれません。海外ではスタンフォード大学にいたということだけでも関心を引くようですし、2022年に米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディア部門が主催する国際アワード「MIT Technology Review Innovators Under 35 Global」を受賞したことで、さらに広く知られるようになりました。
研究の進捗状況は、今、どういう段階ですか。

研究室の学生を指導する松久准教授
有機合成による材料開発、その材料を使っての電子デバイス開発、そしてすでにできている電子材料の応用探索。これが現在の3本柱です。
伸縮性のある電子材料は開発が進み、伸びる半導体材料も最近できました。その材料でつくった半導体デバイスの性能をいかによくするか、その半導体デバイスをどう使うか、それと同じように伸縮する電子材料をどう開発するかを今、検討しています。
用途に関しては、医療分野から共同研究の提案がいくつか来ています。
医療分野との共同開発では具体的にどういうことをされているのですか。
ステルス電極と呼ばれる透明電極がありますが、透明なだけでなく、肌に貼ると肌と完全に一体化するような生体電極を現在開発しています。厚さが5ミクロンを切るほどしかなくて非常に柔らかく、ヤング率(弾性係数)はプラスチックフィルムの1,000分の1ほどです。
この電極なら額に貼ったまま外出できるため、24時間脳波を取り続けることができます。そうすれば、うつ病やアルツハイマーといった脳に関係する病気を早期に発見できるようになる可能性があります。アルツハイマーなどは早期に治療を始めれば劇的に進行を遅らせられるといわれているため、大きな期待が寄せられています。そのほかには、ディスプレイの機能を持たせた透明な材料も開発しています。