One Hour Interview
皮膚のように柔らかな電子材料を追い求めて
松久直司
「人」と「電子工学」を融合
医療用のウェアラブルデバイスでも、着け心地は大切なのですか。
以前、シンガポールにいたことがありますが、年中暑くて、湿度も高いんです。そういうところで長期間装着するとしたら、やはり着け心地も重要な要素になります。そもそも腕時計とか指輪は身に着けたくないという人もいますから、装着していても違和感を感じない、着けていることを感じさせないのが理想です。
また、ファッション性も大切です。生体データは長時間取り続けることに意味があるものが少なくありません。電極が目立ったりして着けたら街中を歩けないようなデバイスでは、データを取ることができないのです。
そういう問題を解決できるデバイスができたということでしょうか。
私たちが開発した電子材料は人間の皮膚と同じくらい柔らかいため、皮膚の表面にペタッと貼り付くウェアラブルデバイスをつくることができます。伸縮性があるため着け心地がよく、装着していることを忘れてしまうようなデバイスです。また、いかにも機械を着けているような見た目にもなりません。
その応用範囲は、ヘルスケアの分野以外にも広がっています。今、VR(Virtual Reality=仮想現実)やAR(Augmented Reality=拡張現実)の世界では大きなデバイスを顔に装着していますが、私たちの材料を使って電極をつくれば、目の周りなどに貼るだけでVRやARの入力デバイスとして使うことができます。
本質的に人に近いような電子材料をつくることで、人とエレクトロニクスを融合するようなデバイスができるのではないかと考え、ヘルスケアに限らず多様な分野での応用探索を行っています。