ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

植物と昆虫の攻防を分子レベルで解き明かす

新屋友規

コツコツの積み重ねが導いた今

虫と植物の相互作用というテーマで研究をするようになったのはいつごろからですか。

 ここに着任してからです。それまでは、植物が病原菌を認識するシステムを自分のメインテーマとして研究していました。昆虫と植物の攻防を研究する研究室にきたので、植物が害虫に食べられていることをどのように感知しているのかを、現在のテーマの1つにしました。植物がどうやって自分と自分以外を見分けているのかというのは、一貫して興味を持っている課題です。

植物には昔から興味があったのですか。

 そうですね。砂漠緑化の話を聞いてわくわくするような子どもでした。つくば科学万博が開かれたときには、ジャガイモとトマトを細胞融合してつくられたポマトが展示されて話題になりました。それを知ったときには、面白いなと思ったことを覚えています。学生時代も、植物科学研究や植物バイオテクノロジーに関わるような仕事ができたら、と考えていました。

近年、世界中で農業害虫が問題になっているようですが。

 ちょうど今、植物の防御システムに注目しながら、新しいテクノロジーを組み合わせた、これまでになかった殺虫剤の創出にも挑戦しています。アフリカなどでは蛾やバッタが大量発生して、農作物に深刻な被害を与えています。将来的にはそうした虫害を防ぐことに貢献できるかもしれません。

今後の目標はいかがですか。

 ある人にいわれたことがあります。君は目の前のことをコツコツと積み上げてきた結果、今の場所にいるのではないか、と。研究は進めてみると、思いもよらない面白い結果や想定を超える重要な成果に結びつくことがあります。コツコツとやり続け、ふと後ろを振り返ったときに、それなりの成果が積み上がり、植物と虫の攻防において新たなモデルを提唱できた、そんなふうになればと思っています。

新屋准教授(中央)とガリス教授(右から2番目)、研究室の皆さん

新屋友規[しんや・とものり] 1976年、福岡県生まれ。東京農工大学工学部卒業、同大大学院工学研究科生命工学専攻修了、博士(工学)。理化学研究所、千葉大学、明治大学などを経て、2013年、岡山大学資源植物科学研究所助教。2019年より現職。本を片手にふらっと出かけ、街を歩く“読書旅”が趣味。

[第37回 松籟科学技術振興財団研究助成受賞]

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