One Hour Interview
酵素で解き明かす生合成のメカニズム
森 貴裕
変異の導入でつくるオンリーワンの化合物
酵素の構造や反応のメカニズムなどがわかれば、新しい化合物の生成や、より効率的な生合成などが可能になってくるのではないでしょうか。
はい。酵素が基質と結合する活性部位を改編することで、天然にはない、本来の生合成ではつくられないような化合物をつくることができます。
どのような方法で新しい化合物が生まれるのでしょうか。
酵素は水素結合などにより、活性部位で基質をがっちりつかんでいます。その水素結合を壊したり、活性部位のアミノ酸を少し異なるアミノ酸にしたりすれば新しい反応になるのではないかと考え、ランダムに変異を導入する進化分子工学という手法を取り入れています。ほんの1つか2つ、変異を導入することで全然違う形の化合物がつくられます。自然にはない化合物になりますから、学生には「君たちもオンリーワンの化合物をつくることができるよ」といっています。
3つの目標のうち、有用な新しい化合物をつくるという目標にかかわる研究ですね。
有機合成的に難しい反応を酵素が行っている場合があるのですが、それを模倣することでバイオミメティックな新しい反応に結び付けることもできるのではないかなど、いろいろ試しています。