One Hour Interview
酵素で解き明かす生合成のメカニズム
森 貴裕
酵素の連続反応はまるで自動車工場
反応を触媒する酵素はいろいろあるのですか。
はい、さまざまな酵素があります。それぞれの酵素が連続した反応を何段階も組み立てていって、最終的な化合物ができます。学生に講義するときには、自動車工場のベルトコンベヤーのような形で、簡単な部品から始まって酵素がガチャガチャと組み立てていくことで、最終的に自動車ができる、生成はそういうものだと話しています。
さまざまな酵素は、それぞれ役割が異なるのでしょうか。
反応を触媒するという点は同じですが、ポリタケイドという化合物を構築するポリタケイド合成酵素、装飾を行う酸化酵素などいくつかのグループに分かれており、機能が異なります。また、ごくまれには多機能型の酵素もあります。複数の段階を経る反応で、ある段階の反応を触媒した後に別の段階の反応を触媒する酵素もありますし、本来なら1段階ずつの反応なのに、一気に4段階くらい反応を進める酵素もあります。
4段階も反応を進めるメカニズムはわかっているのですか。
そのメカニズムは、酵素の結晶構造を解くことで解明できています。ある基質のときにはこういう形、次の基質のときには別の形というように、異なる形を活性部位に保持することができ、その時々で形が違う化合物を受け入れる。だから、1つの酵素で何段階も進めることができるのです。