One Hour Interview
今、見えないものを見えるようにしたい
馬越貴之
生物観察にシフト
現在はどういう研究に力を入れているのですか。
この技術を使って生物を観察できるようにする研究です。電子顕微鏡は電子をまっすぐ飛ばすために真空状態にする必要があります。そのために生きた状態の生物を観察することはできません。先端増強超解像ラマン分光技術なら、生きている状態の生物を観察できるという優位さがあります。材料の観察をやめたわけではありませんが、今は生物観察のほうにより強い関心があります。
生物観察にシフトしたということですが、何かきっかけがあったのでしょうか。
私は応用物理で学位を取っています。余談になりますが、物理系の大学生には生物が嫌い、あるいはあまり関心のない人が多いんです。高校で学ぶ生物は暗記しなければならないことが多いせいかもしれません(笑)。でも、ずっと物理の研究をしていると、一方で生物の不思議さもわかってきて、だんだん興味が湧いてくるんです。それで私は2016年に金沢大学でポスドクをすることにしたんです。
なぜ金沢大学だったのですか。
これまでの先端増強超解像ラマン分光技術だと、1枚の画像を撮るのに頑張っても10分くらいかかりました。しかし、生物は動きますから10分もかかったら画像がぶれてしまいます。つまりカメラでいえばもっとシャッタースピードを速くする必要があるわけです。金沢大学の安藤敏夫先生が開発された高速原子間力顕微鏡は、まさにそのシャッタースピードを超高速にした技術なのです。金沢大学に行ったのは、その技術を学ぶためでした。