ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

肺高血圧症の治療薬開発へ

山村寿男、山村 彩

薬は世界中の患者を治すことができる

(奥様に)こういう分野の研究や実験では、どういう資質が必要になりますか。

彩さん 私が出産後も仕事に復帰できたのは、大学院の修士課程のときに(先述の教授に)かなり厳しく指導されたおかげで実験技術が身についたからだと思います。あのとき身についた手技は今でも体に染みついています。

PAH患者由来の培養細胞を継代しているところ。この細胞を用いて、新規PAH治療薬の開発に向けたin vitro実験を行っている。

手技とは例えば?

 イオンチャネルは主に細胞膜上にあるイオンを通すタンパク質です。イオンの挙動を記録する方法の1つにパッチクランプ法があります。これはイオンチャネルにイオンが流れるときの微小な電流を検出する方法で、大学の研究室でも実験装置が整っているところはとても限られています。細胞を単離したり培養したり、組織標本を作製したりするのに高度な手技が必要ですし、専用の機械を使いこなすのにもテクニックがないとできないからです。いろいろなイオンチャネル電流を検出するには、細かな溶液条件やパルスプロトコールが必要です。

彩さん 1日に1例取れれば上出来といわれる実験をずっと座ってやらないといけないのですが、私は大学院生時代にずっとそれをしていたので、留学したときも全く苦になりませんでした。

ご家庭でもご夫婦で研究の話をされるのですか。

 夫婦の会話の大部分は研究の話ですね。家の中でも結構意見を戦わせることがあるので、息子は小さい頃、いつもけんかをしていると思っていたようです。

本当は仲がいい?

 のはずです(苦笑)。

彩さん 今、息子は研究者になりたいと言っています。それも「パパみたいな研究者に」と。

それはいいですね。ちなみに先生ご自身はなぜ薬学を選んだのですか。

 父が企業の研究者で、母は教育者でした。そんな影響もあって、僕は何かを発見する研究者とそれを人に伝える教育者になりたいと思っていました。まさに親の遺伝子のハイブリッドですね。自分の好きなことができる大学の研究者にずっとなりたいと思っていました。大学受験では医学部と薬学部に合格して、最初は医学部に行こうと思っていたのですが、高校の恩師が「医師は目の前にいる患者しか治すことができないが、薬は世界中の患者を治すことができる」と話してくれて、そこで僕の人生が決まりました。

やまむら・ひさお 1973年、愛知県生まれ。名古屋市立大学薬学部卒業。同大学院薬学研究科博士前期課程修了、博士後期課程修了。博士(薬学)。日本学術振興会特別研究員、名古屋市立大学大学院薬学研究科助手、助教、講師、准教授を経て2018年4月より現職。2010年から1年間、米国イリノイ大学シカゴ校医学部に留学。趣味は海外旅行とドライブ。現在、山村研究室は24人の学生が在籍する大所帯。

[第36回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞]

やまむら・あや 1977年、愛知県生まれ。名城大学薬学部卒業。名古屋市立大学大学院薬学研究科博士前期課程修了、同大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。病院薬剤師として勤務後、米国イリノイ大学シカゴ校医学部に留学。金城学院大学薬学部助教を経て2017年5月より現職。2016年には米国アリゾナ大学ツーソン校医学部にも短期留学。趣味は家族旅行、ピアノ、書道。寿男さんは「とても優しくて協力的」とのこと。

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