ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

肺高血圧症の治療薬開発へ

山村寿男、山村 彩

イオンチャネルの阻害薬が新しい治療薬になる

それは興味深いですね。もう少し詳しくお聞かせください。

 この20年で数種類のPAHの薬が開発されましたが、それらの薬では改善しない患者さんが多くいます。臨床現場では、それらの薬を同時に投与する併用療法が一般的になっています。しかしそれでも薬が効かない患者さんがいます。だから今までとはメカニズムの異なる薬が求められています。そこで僕が患者さんの細胞をDNAマイクロアレイで調べたところ、あるイオンチャネルの発現が1,000倍くらい上がっているのを発見しました。しかもこのイオンチャネルは、PAHが起こっている部分だけで高発現しています。だからそのイオンチャネルを標的にすれば、新しいタイプの薬ができるのではないかと考えています。

PATHで発現上昇するイオンチャネルの阻害薬は、新規PATH治療薬として期待される。

これはすごい発見になりそうですね。

 すごい発見だと信じて頑張っています。2020年の4月には特許も申請しました。

それはどういう特許なのですか。

 そのイオンチャネルの阻害薬が新しいPAH治療薬になるという特許です。

それが創薬に結び付くとしたら、これからどういう道筋をたどることになるのでしょうか。

 化合物ライブラリーからスクリーニングでこのイオンチャネルの作用を阻害する化合物を見つけてきたら、細胞実験をして、動物実験をして、薬効が確認できたら臨床試験に進みます。もちろん大学でできるのは前臨床試験までで、そこから先は製薬会社などとタイアップすることになります。

仮にその研究がうまくいった場合、実際に使用されるまでにはどれくらいかかる見込みでしょうか。

 新しい薬を創るとなると、どんなに早くても10年以上はかかるでしょう。だからもう1つ、別の道筋も考えています。ドラッグリポジショニングといわれるもので、ある疾患に有効な既存の治療薬から、別の疾患にも有効な薬効を見つけ出すという方法です。今、PAHで苦しんでいる患者さんを少しでも早く助けるためには、そういう近道を取ることもありだと考えています。

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