ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

新しい機能性を持つ次元制御型集合体の開発にチャレンジ

羽毛田洋平

粘り強さは負けない

分子設計・合成と解析を繰り返す、根気のいる作業ですね。

 そうですね。でも、その過程で新しくわかってくることがとても多くあります。特に、π電子系イオンを形成する方法としては、電荷的に中性のπ電子系のイオン会合体を使う方法と、もともとがπ電子系イオンであるものを用いる2つの方法が主にあります。アニオンとカチオンをそれぞれ合成し、形成したイオンペアの中には、カラフルな色彩や発光特性を示すものもあります(溶液発光のデモンストレーションを示しながら)。他にも、イオン添加刺激に応答する分子を用いて、刺激応答により発光特性の変化と合わせて、ゲルからゾルへと溶解する集合体に関する研究も行っています。

博士課程を修了し、博士研究員として勤務されたあと一度、民間企業に就職され、そのあとまた大学に戻られていますね。

 大学での研究とは異なり、より具体的なものを実社会に送り出すには企業はとてもパワフルだと感じていたこともあり、企業へ行き、3年間にわたり研究開発の仕事に従事しました。仕事はとてもやりがいがありおもしろかったのですが、機能性材料の開発において、分子レベルの基礎的理解をさらに深める必要があると感じ、大学での研究を再開したいと考え、復帰しました。

復帰においても母校の立命館大学を選ばれたのですね。

 環境をよく知っているということがありますが、何よりも学生の頃から指導していただいた前田先生がいらっしゃいます。有機化学・超分子化学を研究している研究室は他の大学にもありますが、分子にこだわり、幅広い研究を活発に展開しています。ここでしかできない研究を大いに発展させたいと思います。

研究者として羽毛田さんの強みはどういうところにあるとお考えですか。

 諦めない粘り強さでしょうか(笑)。これは合成化学者に限らず研究者全般に大事な要素のひとつだと思います。一方で、諦めが悪いという言い方もできますが、大事なのはバランスでしょうか。あと、合成した分子がどういう集合体構造をつくるかイメージするのも負けられません。

研究において大切にしていることは?

 日中は研究室で学生と一緒に過ごす時間が多く、研究の議論を行っています。このとき、学生との会話の中にあるちょっとした情報も漏らさないように心がけています。すべてのネガティブなデータにも研究を前に進めるヒントが隠れているので、徹底的に話を聞きます。また、他の人が発案しないような新しい実験を組み込みたいといつも考えています。

最後にこれからの抱負をお聞かせください。

 これまではどちらかというと結晶性のある硬めの材料を扱ってきましたが、もう少し柔らかい材料に展開したいと考えています。将来的には、ポリマーをはじめとした共有結合性材料を凌駕する高機能超分子材料を世の中に提供したいです。分子集合体からなる柔らかな細胞が、これだけ高度な機能を発現しているのですから、きっと何か独自の展開があると考えています。

立命館大学 生命科学部応用化学科助教 羽毛田洋平[はけた・ようへい] 1984年、長野県生まれ。立命館大学大学院理工学研究科博士後期課程修了(博士(理学))、日本学術振興会特別研究員、旭化成㈱、立命館大学専門研究員を経て、2017年4月より現職。2011年に井上研究奨励賞、2017年に日本化学会第97春季年会優秀講演賞を受賞。「子どもの頃は勉強よりも、昆虫や水晶とりばかりしていた」とか。趣味は登山とキャンプ。登山を通じて知り合った裕子夫人と2017年に結婚した。

「第35回松籟科学技術振興財団研究助成受賞」

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