ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

新しい機能性を持つ次元制御型集合体の開発にチャレンジ

羽毛田洋平

聞く耳持たない分子たち

現在の研究では、電荷積層型集合体と電荷種分離配置型集合体のどちらにウエイトを置いているのですか。

 ちょっとした分子構造の違いで集合体構造は変わりうるので、どちらの集合体にも力を入れています。しかし、異種電荷種の交互積層構造からなる電荷積層型集合体は分子設計次第である程度つくることができるのですが、分離配置型集合体は極めて難しい。学会などにおいて頻繁に他の先生方から「そんな構造は無理なのでは?」などと指摘されます(苦笑)。たとえば、磁石のN極同士が反発するのと似ていて、同種の電荷は静電的に反発して近づかないのです。しかし、これまでの研究によって、異種の電荷が適切な配置にあると、積層方向における静電的な反発を緩和できることがわかっており、これをうまく利用することで電荷種分離配置型集合体が実現できそうな手ごたえを感じています。実際に、これまでに発表した論文の中で、π電子系アニオンに適切なカチオンを組み合わせることで、同電荷種のみの配列を達成し、高い正孔輸送特性を示すことを明らかにしました。電荷種分離配置型集合体を自在につくる分子設計が確立できれば、さまざまなエレクトロニクス材料の創製に役立つと思います。でも、目的とする構造になってほしいとこれまでの経験をフル活用してあれやこれやと分子設計するのですが、うまくいかないことが多いのが実情です。分子はそう簡単には言うことを聞いてくれません。だからおもしろい。

完全な電荷種分離配置型集合体からなる材料ができるとしたらいつ頃になる見込みなのでしょう。

 うーん……。

できるという可能性は見えてきているのですか。

 もちろん、見えています。さまざまなイオンの設計・合成を行い、組み合わせを実施し、得た材料の構造と機能の解析を進めています。登山でいえばまだ3合目か4合目といったところでしょうか。

いつ頃からこのテーマの研究をされているのですか。

 今の研究は、立命館大学の学生のときに取り組んでいたアニオン応答性分子の集合体に関する研究のエッセンスを発展させたものです。そういう意味では軸となるテーマとしてだいぶ長く取り組んでいることになりますね。もちろんこのテーマの他にも複数の研究を手がけています。

次のページ: 粘り強さは負けない

1 2 3 4 5