One Hour Interview
新しい機能性を持つ次元制御型集合体の開発にチャレンジ
羽毛田洋平
有機半導体材料としての利用を見込む
つまり、世界初ということですか。
そうですね。ただ、実際には私たちもこのような集合体の形成を完全には制御できていません。構成ユニットを一つひとつ設計して、集合体構造と機能性の関係性を理解し、材料を創製する指針をつくろうとしているところです。
そういう材料ができたとしたらどういう場面で使われると想定できますか。
たとえば、有機半導体材料ですが、設計次第では適切な条件下において流動性を持たせることができるので、たとえば小さなすきまにペースト状の材料を流し込んでいくことができ、その場で分子が規則的に並ぶことで電気伝導性を示す集合体を形成します。わざわざ加工して接着させる必要がないので、工程が省略できるようになるでしょう。次世代の電気伝導性の材料としての利用が見込めます。 一方、電荷積層型集合体は、外部から集合体に電場をかけたとき、アニオンとカチオンのペアの間に双極子が誘起されることから、それを規則配列することで強誘電性材料として、たとえばメモリー機能の発現が可能になるとみています。そういったことがこれらのイオンペア集合体のモデルでは可能になるのです。
機能性材料の創製が効率的になる可能性もあるのですね。
異なる機能を持つ正電荷種と負電荷種からひとつのイオンペアを形成するため、それらの組み合わせによって多様な機能性材料の創製が可能であることも利点です。つまり、10種類の負電荷種と10種類の正電荷種から形成されるイオンペアは理論的には100種類になります。要するに、ひとつのイオンペアに複数の機能を付与できるので、機能の細かなチューニングや、使用する材料の量を少なくすることができるかもしれません。最近、こうした機能を有するイオンペア集合体はいくつか研究が行われているのですが、分子の並び方を緊密に制御することは容易ではありません。構成ユニットの構造にこだわり、アニオンとカチオンの間にはたらく静電的相互作用を適切に集合体に組み込むことで、イオンを規則的に並べることができます。これによって、たとえば、加熱して集合体を融かして流動性を持たせても、冷却し固まると自発的に特徴的な組織構造を形成することができるようになります。