One Hour Interview
フルオラスケミストリーで新しい反応法・新材料の開発を実現
松原 浩
100年間変わらなかった有機合成法
それが新しい反応の方法ということですか。
有機の合成反応は100年以上スタイルが変わっていません。ベンゼン環を最初に見つけたときの人たちと同じように今でもフラスコなどの容器に材料を入れ、攪拌したり蒸留したりするわけです。手作業の泥臭い方法です。
有機合成反応は、いずれその新しい方法になっていくということですか。
いや、さすがにそこまではいかないでしょう。フルオラスケミストリーはまだ認知度が低いので、視点の違う合成の仕方を提案したということです。
この方法は光を遮断しておかないと副生成物ができてしまいます。そのため最初はアルミホイルを巻いたりしていましたが、あるとき逆転の発想で、光を当てたらどうなるかと考えて実験してみました。このときはヘキサンではなくイソオクタンを使うとともに真ん中のフルオラス相を倍にしたのですが、反応の生成物として臭素ではなく、臭化水素が反応したものが選択的にできました。
またフルオラスより比重の大きい水素化カルシウムや、カルシウムカーバイドといった固体を使った実験もしました。すると、水素化カルシウムのときは水素ガスが発生し、カルシウムカーバイドのときはアセチレンガスが発生しました。つまり、ガスボンベを使わず試験管1本でガス発生装置ができたというわけです。