ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

カロテノイドの機能を評価し、作用メカニズムの解明を目指す

菅原達也

血管新生を抑制する働きも

資料によると、カロテノイドには血管新生を抑制する働きもあるそうですが。

 そうですね。僕たちは藻類や海産無脊椎動物などに含まれる特有のカロテノイドを精製し、機能評価を進めてきました。その中で褐藻(かっそう)由来フコキサンチンや緑藻(りょくそう)由来シフォナキサンチンが強力な血管新生抑制機能を持つことを明らかにしてきました。

試料からターゲットとなるカロテノイドの化学構造を解析し、どれくらい含まれているか調べる。ターゲット物質を抽出・精製した後、培養細胞や実験動物を用いて機能性を評価する。

ガン細胞が増殖するときに、周囲に血管を新しくつくって栄養素や酸素を取り込むのが血管新生ですね。ガン以外の病気でも血管がつくられることはあるのですか?

 動脈硬化や肥満にも血管新生が関係しています。太って脂肪細胞が増えれば当然、血管ができるわけです。だから血管新生を抑制できれば、いろいろな疾病も抑制できるのではないかと考えました。ただ僕らは医師ではありませんから、実際に使うところまで突き詰めることはできません。あくまでもデータとして示すところまでですね。そこで少し方向転換して、血管新生と皮膚のしわの関係にターゲットを絞ることにしたのです。

それがアンチエイジングにつながるわけですね。

 皮膚は体にとってとても大事な機能を有しています。体内と外界を分けているのですからね。体の健康を保つには不可欠なものです。しかし皮膚は紫外線が当たると老化が促進されます。紫外線の照射により深いしわができる現象で、光(ひかり)老化と呼ばれています。漁師さんはよく顔に深いしわがあるでしょう、あれがいい例です。この光老化現象のときにも血管新生が起きているのです。光老化には酸化作用も関わっているので、抗酸性があり、血管新生も抑制できるカロテノイドは、しわの予防にも効果があるのではないかという発想です。僕は節操がないので(笑)、いろいろなことを研究していますが、一番やりたいのがこの研究なのです。

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