One Hour Interview
カロテノイドの機能を評価し、作用メカニズムの解明を目指す
海洋生物が有するさまざまな成分の機能の解明や利用法の研究に取り組んでいる菅原達也さん。 特に注目しているのがカロテノイドだ。天然の動植物に広く存在する色素のカロテノイドには、 血管新生の抑制やアンチエイジングに有効な機能があるという。食品や医薬品などにこの研究成果が応用されれば、 ガンの治療や老化防止に新しい可能性が開けることも期待できるというわけである。
菅原達也
京都大学大学院
農学研究科 応用生物科学専攻
海洋生物生産利用学分野 教授
海洋生物資源で生活を豊かに
海洋生物に含まれる成分の研究ということですが、なぜ海洋生物なのですか?
日本は国土の面積は狭いですが、島国なので海岸線の長さは世界でも指折りです。領海と排他的経済水域の広さもやはりトップテンに入ります。資源の乏しい国としては、そうした広い海の資源を利用していくべきだと考えて、海洋生物に着目しました。
海洋資源にはメタンハイドレートなどのエネルギー資源もありますが、僕は農学部出身なので、食べ物という観点を重視しています。海洋生物資源で生活を豊かにするのが、最終的な目標です。
食品として利用して生活を豊かにするということでしょうか?
単に食品の量を多くするということではなく、健康維持とか疾病予防に役立つものを考えています。最近はアンチエイジングというテーマも研究しています。アンチエイジングという言い方はあまりしたくなくて、もう少しサイエンティフィックな言い方はないかなと思いますが・・・・・・。老化防止、つまりできるだけ若々しい状態をキープするということです。健康や疾病予防も大事ですが、そういうテーマで研究している人はたくさんいます。僕としては見た目の若々しさをキープする方法を科学的に解明していきたいのです。
海は広く、資源もたくさんあるので、可能性も大きいということでしょうか?
そういう建前です(笑)。実際にはそんなにたくさんのものを調べられませんから、僕たちはひとつ、カロテノイドに注目しています。もともと僕は脂質が専門なのですが、カロテノイドは脂溶性の色素ですから、ターゲットとしてはファミリアなところがあります。自然界には750種類くらいのカロテノイドがありますが、海の中のカロテノイドには独特な構造を持つものがたくさんあります。それらを集められるだけ集めて生理活性を調べ、何か有効に使えるのではないかと考えています。