ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

有機合成で新しい特性を持った磁石の開発に挑む

細越裕子

リケジョの育成にも取り組む

理系にいく女子学生を増やすために具体的に何をしているのですか。

 ひとつは実験体験です。大学に来て実験を体験してもらっています。宇宙の電波をキャッチするとか、DNAの解析とか、なるべく幅広いテーマの実験を用意するようにしています。3月の最終行事は合宿形式で、実験の後、発表会も行います。その他の行事としてロールモデル講演会とか女子大生との交流会なども行っています。今年は初めて一般企業の見学会を実施して、企業で働く女性研究者との交流をしました。冬には公立の研究所を見学し、交流会も行います。理系学部を卒業した後の職業イメージを持つことは大事ですから。

アカデミックの世界で、女性の不利さを感じたことはありますか。

 私の場合、幸い先生が皆さんよい方だったので、特に感じたことはありません。ただ、他の研究室などの女性から、コンパの席でちょっとどうかな、という話を聞いたことはありますね(笑)。私の場合、指導教授の先生から、大学院の博士課程の入学試験の翌日に「女性だから就職では苦労すると思うよ」と言われたのですが、これは本当に心配してくれていたようです。分子研に就職したときは、技官ではなくて助手以上の教員としての女性研究者は初めてということで、エレベーターに乗るたびに知らない方から「ああ、あなたがあの?」とよく言われました。初めはちょっとプレッシャーでしたが、そんなこと言っても仕方がないのであまり気にしなくなりました。もともと楽観的な性格なので。

最後にこれからの目標をお聞かせください。

 分子性化合物だから実現できる、有機化合物だから実現できる磁性体をつくりたいですね。転移温度の高温化という意味では、伝導電子を付与したいですね。今まで電気を流して磁石になるという分子性物質はほんの数例で、遷移金属が磁性を担い、有機分子が伝導性を担うもので、互いの相関はありませんでした。そうではなくて有機分子が磁性にも伝導性にも寄与するようなものをつくりたいと思っています。そのためにはまだまだブレークスルーが必要ですけどね。

大阪府立大学大学院 理学系研究科物理科学専攻 教授 細越裕子[ほそこし・ゆうこ]1968年、東京都出身。埼玉大学理学部化学科卒業。東京大学大学院理学系研究科化学専攻博士課程修了。岡崎国立共同研究機構(現 自然科学研究機構)分子科学研究所助手を経て、大阪府立大学大学院理学系研究科物質科学専攻助教授に。2009年4月より現職。2011年にはフランス・ポールサバティエトゥルーズ第3大学客員教授に就任。「自分が学生のとき自由にやらせてもらったので、学生には細かいことは言わない」という。男子学生からは「男前の先生」という声も。

「第30回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞」

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