伝説のテクノロジー
萬古焼(ばんこやき)
作陶家・堀野証嗣さん
古萬古の魅力を伝えるために
土が出来上がったらろくろを使って造形し、室内で自然乾燥させる。そして茶わんなどの場合は高台を削り、素焼きにし、釉薬をかけて下絵付けをして登り窯で本焼成する。そして最後に上絵付をしてから電気窯で比較的低い温度で焼き、完成というのが大まかな工程だ。
「登り窯の中に作品を100個入れたら、きちんと出来上がるのは30個にもなりません。化学的に合成した釉薬を使ったり、温度をコントロールしやすい電気やガスの窯で本焼きしたりすればもっとたくさんできるのでしょうが、でもこれが本来の萬古焼なんですよ」
萬古焼の土鍋を使うとご飯がおいしく炊けるといわれており、多くの人が使う理由になっている。また萬古焼は頑丈で、堀野さんも「萬古焼の土鍋は長石の一種のペタライトが入っているので、何百回使っても割れたりしません」という。
堀野さんは、大量生産の萬古焼を否定しているわけではない。ただ、今は萬古焼の本場である四日市市や菰野町でも、古萬古のよさだけでなくその存在すら知らない人がいることに危機感を抱いている。だからこそ、一人の作陶家として古萬古の魅力を伝えようとしているのだ。
堀野さんのような作陶家がいる限り、萬古焼は「萬古不易(いつまでも変わらない)」であり続ける。
堀野夫妻。右の灯籠は先代の賢三さんが四日市市にある萬子神社に奉納したものの試作品。
堀野証嗣[ほりの・しょうじ] 1949年、三重県四日市市生まれ。かつてはオブジェのようなものを多くつくっていたが、茶陶に転向。結婚後、朝日陶芸展、現代工芸展などに出品する一方、個展を開き萬古赤絵の作品を発表しながら萬古焼のよさを知ってもらうべく作陶を続け、今日に至る。1996年、四日市市の工房から菰野町の陶芸村に転じた。
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