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伝説のテクノロジー

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彫金

彫金師・小林正雄さん、浩之さん

0.1ミリ以下の精度で打つ

 技法の一つで、魚々子(ななこ)と呼ばれるものがある。切っ先の刃が円形になった鏨を打ち込み、非常に微細な粒を置いたように見せる技法だ。一打ちで同時に複数の粒を彫ることのできる鏨もあるが一つひとつ打ち込んでいく「一粒魚々子」ができる彫金師は限られているといわれる。

「銀蹴地彫金具(ぎんけじぼりかなぐ)」、仏具の框(かまち)に付ける金具。銀全体を鍍金し、模様を蹴り鏨で彫り、魚々子の部分(地の部分)を鋤き取り、魚々子を蒔いた(魚々子を打つことを蒔くという)七宝の紋様を描いている。

 「最近、魚々子は浩之に任せています。伊勢神宮の仕事をしていたときに浩之は5年くらいずっと魚々子をしていました」

 と正雄さん。数千粒の魚々子ともなれば、途方もない根気と集中力が必要になる。

 「難しいのは魚々子をそろえること。ほんのわずかでも打つ位置がずれると、次の魚々子が合わなくなってしまいます。0.1ミリ以下の精度で打たなくてはなりませんが、少しでも集中力が切れるともうだめです。彫金は直しが利かないので、気が抜けません」(浩之さん)

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