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伝説のテクノロジー

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彫金

彫金師・小林正雄さん、浩之さん

数千本の鏨(たがね)を使いこなす

 かつては日本刀の鐔(つば)にも彫金の技が施された。しかし、明治維新で廃刀令が布告され、一般市民の帯刀が禁じられたあおりを食って彫金の仕事は激減した。さらに近年、ライフスタイルや住宅様式の変化によって仏壇を置く家庭が激減したことも彫金師にとっては痛手となった。かつては仏壇や仏具の金物なども、彫金師が活躍するフィールドだったのである。今は仏壇以外の錺金具も廉価な輸入品が幅を利かせているのが実情だ。

 それでも小林彫金工芸は、ほとんど営業をしなくても仕事が途切れることはないという。腕のいい彫金師が2人もいるのだから、もっともなことである。

 鏨を使って金属の表面に紋様を彫り込む彫金にはさまざまな技法がある。金属の一部を切り取り残した部分で紋様を表現する透かし彫り、蹴るように鏨を打ち込んで線を彫る蹴り彫り、表面を削った金属に別の金属をはめ込む象嵌(ぞうがん)などの技法が代表的だ。どういう技法でどういう紋様を彫るかによって、鏨を使い分ける。小林彫金工芸には仕事に応じてみずからつくった3,000本から4,000本の膨大な数の鏨がある。

 「どこにどの鏨があるか全部覚えています。仕事が入ったらすぐ、どの鏨とどの鏨を使うかも頭に浮かびます」

 と正雄さんは豪語する。

正雄さんが描いた彫金の原画と鏨の一部。

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