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伝説のテクノロジー

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松煙墨(しょうえんぼく)を使った独特の藍染技法

藍染職人 小沼雄大さん

藍よりさらに濃く深く

約200年前から使っている藍甕に浸して染色をする。

 藍染は、植物に含まれるインディゴという染料で生地を染める草木染の一種である。ジーンズを染める染料にもインディゴが使われている。

 日本の藍染は、蓼藍(たであい)の葉を発酵させた染料に石灰や日本酒を加え、甕(かめ)の中でさらに発酵させた染料を使う。

 こうした藍染は全国に見られるが、栃木の伝統工芸である黒羽藍染には、他と違う大きな特徴がある。蓼藍の染料で染める前に、松の根を燃やしたときに出る煤を墨にした松煙墨を入れた豆汁(ごじる)で下染めをするのである。豆汁は大豆を水に浸し、擂り潰したものだ。「豆汁はグレーの染料のようなもので、一度これで染めることにより、深く濃い藍の色に染めることができます。色が濃い分、黒羽藍染は色が長持ちすると言われています」

豆汁を下染めする豆入れ作業。塗っては天日で乾かしてを最低3回は繰り返す。

 栃木県北東部の黒羽地域は、江戸時代、那珂(なか)川などの河川を利用した舟運が盛んであった。周辺の山林で伐採した木材も河川を利用して運ばれた。そのため多くの材木商が地域に拠点を構え、彼らのまとう半纏(てん)も黒羽藍染で染められたものだったという。

 黒羽藍染紺屋の初代、紺屋新兵衛がこの地で藍染を始めたのは文化文政の時代(1804~1829年)と伝えられている。小沼雄大さんはその初代から数えての8代目である。

 かつて当地には、黒羽藍染を生業とする家が少なからずあった。しかし現存するのは小沼さんの家のみである。

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