ハリマ化成グループ

宮司の背後には製作中のお旅所の御仮殿

伝説のテクノロジー

日本最古の芸能祭典を司る

奈良県の春日大社で毎年12月に行われる春日若宮おん祭。 この壮大な祭礼で重要な役割を果たしているのが、松である。神様が御降臨される際の依代(よりしろ)となる松の木は、春日大社にとっては特別な存在なのである。  この壮大な祭礼で重要な役割を果たしているのが、松である。神様が御降臨される際の依代(よりしろ)となる松の木は、春日大社にとっては特別な存在なのである。

宮司 花山院弘匡さん

国指定重要無形民俗文化財

 神護景雲2年(768年)に創建された春日大社には、武甕槌命(たけみかづちのみこと)様、経津主命(ふつぬしのみこと)様、天児屋根命(あめのこやねのみこと)様、比売神(ひめがみ)様という4柱の神様が祀られている。さらに61社にも及ぶ摂社・末社がある。その中でも比売神様の子どもの神様が祀られている若宮社は、本社格の摂社とされている。

 その若宮のおん祭が始まったのは、保延2年(1136年)のことであった。関白の藤原忠通が天下泰平、五穀豊穣、万民和楽を祈り、大和の国を挙げて行ったのが始まりとされている。それから900年近く、若宮のおん祭は中断されることなく続けられてきた。今、この祭礼は国指定の重要無形民俗文化財となっている。

 「平安時代末、長雨の影響で農作物が不作であったとき、藤原忠通公によりおん祭が斎行されると、長雨がやんだと伝えられています。京都の大きな祭は、100年の大乱である応仁の乱のときにほとんど途絶えました。そのときにもおん祭は続き、さらにそれ以前の南北朝の戦いのときにも行われ、南朝と北朝双方の武士も参加したとの記録があります」と花山院弘匡宮司はそのように解説された。

 おん祭は7月の流鏑馬定(やぶさめさだめ)から始まるが、最大の見どころは12月17日の遷還、お渡り式、お旅所(たびしよ)である。午前0時からの遷幸(せんこう)の儀(ぎ)で始まり、午後11時頃の還幸(かんこう)の儀まで丸1日にわたってさまざまな神事が繰り広げられ、沿道には10万人が訪れる。遷幸の儀とは、若宮様が若宮御殿から1km程隔たれたお旅所まで御遷座される儀式で、還幸の儀は、若宮様がお旅所から御本殿に帰られる儀式である。若宮様にお旅所で宿泊して頂くのは失礼なため、遷幸の儀と還幸の儀は日をまたぐことなく24時間以内に行わなければならない。

次のページ: すべて松材でつくられる御仮殿

1 2 3 4