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伝説のテクノロジー

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アカマツでつくる経木(きょうぎ)の不思議なパワー

経木製作職人 阿部初雄さん

経木でつくったメモ帳も登場

 そんな阿部さんたちに、今、追い風が吹き始めている。プラスチックごみによる海洋汚染が深刻化している中、フランスは2020年までに使い捨てプラスチック容器の販売を禁止する方針を決めた。今後、こうした動きが広がっていくと、日本でも経木の価値がさらに見直されていく可能性がある。

 一方で応援団も現れた。晋也さんの知人など若い人たちのグループが、阿部経木店の経木でメモ帳をつくったり、「フードシート」という商品名で販売を始めたりしているのだ。 「友人の奥さんが管理栄養士をしているため食への関心が強く、経木のことを知ったら一般消費者向けにも売ったらいいと、いろいろ企画し始めたんです。応援してくれる人たちがいるのですから、僕たちももっと頑張っていこうと思います」

 晋也さんがそう言えば、阿部さんがこう続ける。

 「新しい企画商品のことは、息子が窓口になっています。若い人たちがアイデアを出した商品は、通常の経木より高い価格で売れます。今は家族経営だからやっていける部分がありますが、単価が上がって利益が増えれば、人件費を出して人を雇えるようになるかもしれません」

 取材後、阿部経木店で分けていただいた経木を家に持ち帰り、試しに肉の解凍に使ってみた。経木が余分な水分を吸い取り、きれいに解凍できた。夕食のとき、皿の上に経木を敷き、その上に刺身を置いたら、いつもの安い刺身が少し高そうに、そしてずっとおいしそうに見えたのだった。

経木は京都の玉子焼き屋さんでも使われていて、熱々の厚焼き玉子の下に敷いて売られているそうだ。

あべ はつお 1953年、群馬県生まれ。高校卒業後、プラスチック包装資材会社に就職。28年勤務した後、40代後半のとき、阿部経木店に。当時、阿部経木店を切り盛りしていた叔父たちから仕事を教わった。今は孫のサッカー試合観戦やゴルフが楽しみという。隣は次男の晋也さん。

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