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伝説のテクノロジー

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1000年の歴史と伝統が支える平成の備前焼

備前焼作家 伊勢崎 紳さん

もう半分成功した焼き物人生

緋襷平皿
「使って気持ちが良いのが『いい器』」という伊勢崎さんは、作品づくりのために、華道、茶道、そして料理も学んでいる。

 朝8時半に仕事場に出て、正午になったら昼食というように、伊勢崎さんは毎日ほぼ同じような生活をしている。同じことを同じようにするのが大事。根を詰めたらいいものができるというものではない。コンスタントに普通に暮らし、何事も起きない穏やかな毎日だと、いいものができる。それが伊勢崎さんの持論だ。

 「最近、窯の中でどういうことが起きても対応できるようになりました。2年に1回くらい、自分でもいいと思えるようなものがつくれるようになりましたね」

 鎌倉、室町、江戸と続く歴史の中で、備前焼には必ずその時代を代表する作品があるという。名匠がつくる作品は時代の空気を映し出し、擂り鉢ひとつとっても形が違う。土や形を見れば、つくられた時代が分かるともいう。

 「普段している仕事の中で何か発見があると新しいものがつくれます。だからどんどん仕事をしないとだめ。いつか、後の時代の人が見て『平成の備前焼はこれだ』と言われるようなものをつくってみたいですね」

窯変徳利とぐい呑み

 実は伊勢崎さんには3人の兄弟がいる。兄も弟も全員が備前焼作家だ。そして今、伊勢崎さんの3人の子どもたちも、備前焼作家への道を歩もうとしている。4人の兄弟、3人の子どもたちの中にも、備前の心が息づいているのであろう。

 「子どもたちも焼き物が好きになるように育ってくれればいいと思っていましたが、どうやらうまくいきそうです。僕の焼き物人生も半分はもう成功です」

 悠久の歴史を超え、脈々と受け継がれてきた備前焼の技法が、こうして伝承されていくのである。

酒器

いせざき しん 1965年、岡山県備前市生まれ。岡山県重要無形文化財保持者だった伊勢崎満氏(故人)の次男。大阪芸術大学陶芸科卒業。1999年に独立し、備前市伊部で備前焼作家として創作活動にいそしむ。2009年、日本伝統工芸中国支部展岡山県知事賞受賞。

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