伝説のテクノロジー
1000年の歴史と伝統が支える平成の備前焼
1備前焼作家 伊勢崎 紳さん
備前には備前のルールで
伊勢崎さんの祖父、伊勢崎陽山さんも父親の満さんも、備前焼の作家であった。ともに岡山県重要無形文化財保持者となり、名匠と言われた人。伊勢崎さんは代々受け継がれてきた伝統技法を守りながら腕を磨き、若手として頭角を現してきた。
「備前には備前のルールがあります。それを受け継ぎながら新しいものを発見していくことが大事です」
そう語る伊勢崎さんは備前焼が大好きで、子どもの頃から土掘りや窯焚きなどを手伝い、芸術大学を卒業後、独立する前は約10年間、父親の満さんと一緒に仕事をした。しかしその10年間に焼き物の話をしたのは、わずか10分程度だったという。
「父からは言葉では何も教えてもらっていません。これをするなということも言われませんでした。言葉で教えて分かることではないのです。ただ、とにかくたくさん失敗をさせてもらいました。そうして身をもって体験して仕事を覚えていきました。才能だけではだめ。経験の積み重ねが必要です」