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伝説のテクノロジー

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1100年前の駅舎を甦らせた保存・復原の技術

建築家 田原幸夫さん

現代の工法と伝統技術の継承

 一方、復原といっても、どうしても創建時と同じようにはできなかった部分も少なくない。その最たるものは、3階の復原である。

 丸の内駅舎が鉄骨レンガ造りであることは前述したとおり。今回改めて調べたところ、レンガは鉄骨に合わせて加工されており、極めて精度よく積まれていることが分かった。だが、今そのような仕事のできるレンガ職人はほとんどいない。また重要文化財に指定されている駅舎は建築基準法の適用外だが、安全性は確実に担保する必要がある。現在の建築基準法で規定されていないレンガ構造は基本的に使えない。こうした条件からレンガを使うことは断念せざるを得なかった。

鉄骨に合わせカットされ積まれていた駆体レンガ。

 そのため1階2階の既存部分については鉄骨レンガ造りを大切に保存し、3階部分はSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)やRC(鉄筋コンクリート)によって構成した。

 現在、伝統的工法の職人は非常に少なくなっているが、「職人技術は意外に生きている」と田原さんはうれしそうにいう。

 「銅板やスレートも使うので、職人がいないのではないかと心配しましたが、神社仏閣や文化財の修理などの仕事を通じて伝統技術がしっかりと受け継がれていました。モルタルに石の粉を入れてつくる擬石も、今そんな仕事をすることはまずないので無理かなと思っていたのですが、きちんと技術を継承している左官職人がいたのです」

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