伝説のテクノロジー
日本庭園文化を世界に伝えるために
東京世田谷区に本社のある小杉造園は、海外で日本庭園を造る活動に取り組んでいる。
すでにアゼルバイジャンや韓国などで実績を上げている。
「日本庭園の文化、そして日本文化を世界中に広めたい」というのが小杉左岐社長の夢だ。
だが、今は日本国内でも、相続の問題で日本庭園が少なくなり、
日本庭園造りの技術・技能を若い社員にOJTで教えるのが難しくなっているのが実情だ。が実情だ。
小杉造園株式会社・小杉左岐さん
風で倒れた実朝ゆかりの老銀杏
2010年3月10日、神奈川県・鎌倉の鶴岡八幡宮にある銀杏の木が強風のため倒れたことは、多くの人が記憶しているだろう。この銀杏、樹齢が800年から1000年といわれる大木で、鎌倉幕府3代将軍の源実朝はこの銀杏の木の前で暗殺されたと伝えられていた。だからこの一件は新聞やテレビでも報道されたのである。
「あれは、銀杏の木を大事にしすぎたからなんです」
小杉造園の小杉左岐社長が言う。
「銀杏の木は、樹齢200年から300年にもなると、たいていの樹木は幹の中がうろ(空洞)になっているので注意が必要なのです。だから上の枝を抜き(剪定する)、軽くして風通しをよくするのです。上が重くなってしまうと、風を受けたときの抵抗も大きくなってしまいます。おそらくあの銀杏は、由緒ある神の木だったので、枝を抜くことが少なかったのではないでしょうか。また老人になると杖をつくのと同じで、銀杏にも養生が必要だったのでしょう」
小杉さんは「自分たちが管理していれば、倒さずにすんだ」とは言わなかった。しかし、言外にはその自信が感じられた。
実際、小杉造園には、そう言えるだけの実績がある。たとえば2005年には、ソメイヨシノ発祥の地として知られる東京駒込の古木2本を、豊島区役所近くの公園に移植している。2006年には、東京渋谷区の日赤医療センターにあった樹齢500年の大銀杏の移植も成功させた。大型の重機も使うこうした移植は、ただ違う場所に植え替えればいいというものではない。地中深く張った根をある程度切り、枝も剪定し、なおかつ植え替えた場所で樹勢が衰えるようなことがあってはならないのだ。
「根を調べて、どれくらいの水分を吸い上げているのか判断します。そのうえで張りすぎた根を切るのですが、水分を吸い上げている根を切るのですから、小屋(枝葉)をそのままにしていたのでは、消費量が多く水分が足りなくなってしまいます。だから枝の剪定も必要なのですが、形をよく見せながら生かすためには、どの枝をどの程度切るか判断しなければいけません。そういう判断は、長年の経験によって培われた勘が働かなければできるものではありません」
今、こうした古木や大木を移植できる造園業者は、数が限られている。