次代への羅針盤
社会を俯瞰する視点が優れた研究を生む
本間敬之
研究人生を変えた海外滞在
研究人生の転機は1997年、スタンフォード大学での研究でした。修士課程を終える頃、私は漠然と「海外で仕事がしたい」と思うようになっていました。そのことを当時の指導教員に相談すると「海外で仕事がしたいなら博士号を取りなさい」と助言され、その言葉を信じて博士課程に進学。博士号を取得して早稲田大学の教員となり、海外行きの機会をうかがっていました。そして、助教授になった翌年、ついに念願叶ってスタンフォード大学に約1年間滞在して研究できることになりました。
これが、私の研究人生を変えることになります。それまで、私の研究は化学反応により素材表面に金属薄膜を形成する技術でした。一方、滞在先の研究室では、半導体の基板となるシリコンウェーハを原子レベルで超清浄化し、金属汚染や化学汚染から防ぐ技術を研究していました。つまり、素材の表面に金属をいかにうまく析出させるかに没頭していたのに、打って変わって、金属を析出させなくする技術を探求することになったのです。「これまでの正解が一転して不正解になることがあるのか」と苦笑いしたことを、今でも覚えています。しかし、金属を析出させるにせよ、析出させなくするにせよ、その根本で作用しているメカニズムは同じです。基礎の理論を押さえておけば、対極の技術の研究にも対応できます。ここでも基礎理論の重要性を身にしみて感じました。