次代への羅針盤
「出会い」によって研究は導かれる
上垣外正己
座長を引き受けたことで…
私の研究者としての方向性は、東村先生や澤本先生との出会いによって決まりました。人とのつながり、あるいは偶然の出来事などが新しい研究テーマや技術の発見に結び付くことは往々にしてあります。そういう人間関係を大切にし、偶然を見逃さないようにすることが、研究者にとっては大切です。
私がポスドクのとき、ある学会での発表の座長を澤本先生がお務めになることになっていたのですが、ご都合が悪くなり、私に声がかかりました。ポスドクがそのような座長をすることはあまり例がないのですが、これも経験かと思ってお引き受けしました。
すると、その学会終了後に開かれた懇親会で、今度は別の先生から高分子系の若手研究会を主催してほしいと頼まれました。私はその会には参加したことすらなかったのですが、これもご縁かと思ってお引き受けしました。
とりあえずその若手研究会のことや雰囲気を知っておいたほうがいいと思い、先に開かれた研究会に出席することにしました。すると、その研究会で行われることになっていたある発表の座長役が私に回ってきたのです。
座長をするからには、発表する研究のことを下調べして勉強しておいた方がよいと思いました。ところが、その研究に関連する論文を私は持っていたのですが、いざ下調べをしようと思ったらどうしても見つかりません。