ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

学ぶことがあれば研究は面白くなっていく

青柳秀紀

いい発想は心の余裕から

 私が副会長を務める公益社団法人日本生物工学会は、会員のおよそ3割が企業の人たちです。私自身、企業との共同研究も行っており、企業の研究者と接する機会は少なくありません。私たちのようなアカデミアと企業人とでは、ものを見る目、見方が違います。そういう違う目を持つ人たちとの交流は、とても刺激的で勉強になります。

 ただ、私はこれまで企業人は人間関係も含めてもっと幅広い交流があると思っていましたが、最近は意外に閉じた中でやっているようなところがあると感じます。企業の若い研究者は、会社の中でもっと周りを巻き込む力を養ったほうがいいし、外に出てほかの企業や業界、あるいはアカデミアなどと積極的に交流したほうがいいと思います。研究を点に終わらせず、線にして、さらに面的、立体的な広がりを持たせていくためにも、こうしたことは必要だと思います。限られたコミュニティの中だけで活動していては、人脈も広がりません。

 企業の人が、自分で研究テーマを自由に選ぶのは難しいでしょう。しかし、与えられた仕事でも、嫌々やるのではなく、前向きな姿勢で楽しく取り組めば、学ぶことは必ずあるはずです。そのときにそこでしか学べないことが必ずあるはずです。人や物事には一期一会があります。そして学ぶことがあれば、きっとその研究は面白くなっていくでしょう。

 研究や仕事では“ひらめき”が大切ですが、“ひらめき” は、一生懸命に研究や仕事に没頭していて、ふと一瞬、ボーッとしたときに出てくることが多いような気がします。しかし、今の人はアカデミアでも企業でも、ボーッとする時間があまりないのではないでしょうか。大学でも企業のオフィスでも、以前と比べると雑談が少なくなったと感じます。しかし、心の余裕、遊びがないと、なかなかいい発想は生まれません。

 悪い種を蒔くと悪い芽が出ますし、いい種を蒔けばいい芽が出ます。どちらの種を蒔いたとしても、蒔いた種から出た芽は必ず自分自身で刈り取らなければならなくなります。

 ですから、若いうちこそ、いい種を蒔けばいい芽が出るということを信じて創造愉快にいろいろなことに取り組み続けてほしいのです。

いい種を蒔けばいい芽が出ると信じる

青柳秀紀[あおやぎ・ひでき] 1965年、東京都生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。同大大学院博士課程農学研究科応用生物化学専攻修了。博士(農学)。同大応用生物化学系助手・講師・助教授、同大大学院生命環境科学研究科助教授・准教授を経て2011年より現職。日本生物工学会副会長。2000年、日本生物工学会 第23回 照井賞、2023年、日本生物工学会第17回生物工学功績賞受賞。趣味は、家内との散歩と学生との対話。

[第20回松籟科学技術振興財団研究助成受賞]

1 MB

1 2 3 4 5