ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

学ぶことがあれば研究は面白くなっていく

青柳秀紀

従来の微生物培養法の限界

 飛行機を世界で最初につくったのがライト兄弟であることは、よく知られています。しかし、彼らが20世紀の初めに製作した1号機は、飛行時間は1分足らずで、飛んだ距離は約260メートル、最大高度は約9メートル、最大速度は時速48キロほどでした。しかも乗れるのは1人だけです。

 そこから人は、より高く、より速く、より長く飛べるようにと開発を重ね続けてきました。その結果、現在の旅客機は数百人が搭乗でき、最高速度は時速1000キロに近く、最大高度は約 1万3000メートル、航続距離は1万5000キロ近くにまで伸びています。イノベーションとはそういうことだと私は思います。

 寒天培養が果たした役割は非常に大きいものでした。しかしこの100年間、そこにイノベーションはほとんどありませんでした。私たちも研究の現場で、寒天培養法では、培養ができない微生物が非常に多く存在することを日々実感しています。したがって、そういった菌は寒天培養法では発見できないことになります。発見できなければ、もともと存在しないものと考えられてしまいます。これまですべての微生物の1%しか培養できなかった大きな原因の1つが、ここにあるのです。

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