ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

学ぶことがあれば研究は面白くなっていく

青柳秀紀

異分野との交流は不可欠

 寒天培養法を否定するつもりは、まったくありません。しかし、寒天培養法で培養できない微生物が存在するのであれば、別の培養法も検討すべきではないか──。

 そう考えた私たちは、10年ほど前に未培養微生物(微生物ダークマター)を効率よく培養できる培養プレートの開発に成功しました。もちろん、このプレートを使っても99%の未培養微生物をすべて培養できるわけではありません。もしかしたら1%ほどしか培養できないかもしれません。しかしそれでも、これまで1%しか培養できなかったものが2%になれば、倍に増えるということで、これはとても意義のあることだと思います。

 面白いことに、このプレートを使って南極で採取された試料から見つかった微生物と同じ門の微生物を、筑波大学のキャンパスで発見しました。まだまだ改良の余地はありますが、数年のうちには誰もが使えるものにしたいと考えています。

恩師である現筑波大学名誉教授の田中秀夫教授(写真中央)と研究室で助手を務めていたときの私(写真右)。左は助教授だったナイジェリア出身のジェームス・オボンナ先生(現 State University of Medical and Applied Science, Nigeria 学長 )

 従来の方法で培養できなかった微生物ダークマターを取り扱うためには、これまで受け継がれてきた手法や考え方だけでは対応できません。工学や理学、情報学や数学、薬学、医学などの異分野と積極的に交流し、これまでとは異なる視点や発想を学ぶアプローチが必要です。

 しかしそれは、私たちだけに限ったことではありません。今はあらゆる技術や学問が学際的、業際的になっていますから、どんな分野の研究者でも異分野との交流が不可欠です。

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