ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

サブのテーマを持って研究の幅を広げよう

伏木 亨

企業人との談話が学びに

 研究を1つのテーマだけに絞っていると、行き詰まったり、マンネリ化したりするときがあります。そういうときにサブテーマに手をつけると、リフレッシュし、思いがけずメインの研究の突破口が開けることもあります。また、サブテーマ同士がいつの間にか融合して、新しい展開が生まれることもあります。

 ですから特に若いうちは、サブテーマをいくつか持つようにしたほうがいいと私は思います。企業の研究者なら、会社の業務として取り組んでいるテーマとは別に、自分のオリジナルテーマを持つのもいいでしょう。自分だけのテーマについて会社で研究するのは難しいかもしれませんが、いつか自分の時代が来たらこんなことをしたいという意識は持っていたほうがいいと思います。

 そしてもう1つ、人と話すこともとても大事です。人と話していると研究のヒントが得られることがありますし、人の話を聞き、自分の考えを説明する。それだけでも深い学びになります。

 私たちは、15社ほどの食品に関わる企業の方たちと月に1回、談話会を開いています。同じ業界の人間が集まると自社の情報が漏れないかと警戒する部分があるかと思いますが、そんなことはなくこの談話会は10年以上続いており、むしろ今ではお互い気楽に話し合える信頼関係ができています。

 この談話会で企業の方がどういうことを考えているのか、どういうことで悩んでいるのかを知ることは、私にとって大いに勉強になりますし、企業の方たち同士も普段はあまり話し合う機会がありませんから、お互いに学び合ったり刺激になったりしているようです。

 一人で1つの研究に没頭することも大事ですが、そうすると、どうしても視野が狭くなりがちです。人と話す。サブの研究テーマを持つ。こうしたことが研究生活を豊かにしてくれるはずです。

人と話すこと、人の話を聞くことも学びになります

伏木 亨[ふしき・とおる] 1953年、京都府生まれ。京都大学農学部食品工学科卒業、同大大学院農学研究科食品工学専攻博士課程指導認定退学。1981年、博士号取得、農学博士。京都大学農学部助手、同助教授、同教授、龍谷大学農学部教授などを経て2021年甲子園大学副学長就任、2023年4月より現職。『人間は脳で食べている』(ちくま新書)、『味覚と嗜好のサイエンス』(丸善出版)など著書多数。食べることが好きなだけでなく、料理もするという。
[第9回松籟科学技術振興財団研究助成受賞]

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