ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

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サブのテーマを持って研究の幅を広げよう

伏木 亨

食べ物の研究だけではおいしさはわからない

 研究を始めた私は、おいしさに関連した論文に目を通していきましたが、ほとんどすべての研究が甘みや香り、あるいは栄養素などの分析に終始しており、おいしさの本質に迫っていると思えるものはありませんでした。そして私は、おいしさは食べ物の中にはないのではないかと考えるようになりました。では、おいしさはどこにあるのか。食べ物と、それを食べている人間との関係の中にあるのではないか。食べ物だけを分析しても、おいしさはわからない。人はどういうときにおいしいと感じるのか、おいしさの研究は人の研究に等しいというのが私が導き出した結論でした。

 おいしいという感覚は、脳の反応の一種と考えることができます。研究の一環として、私はマウスを使った動物実験を行いました。マウスは脂が大好きです。そこで何種類かの脂をマウスの舌に乗せ、反応を調べました。その結果、炭素が14から26くらいまでつながっている長鎖脂肪酸を与えると膵臓から消化酵素が分泌され、マウスの脳が興奮していることが判明したのです。

 さらに中毒性、耽溺性を調べる実験も行いました。そして、マウスは食べものの味を6~8時間も記憶していて、その間に食べたもののカロリーや栄養価が高いと、食べ物の味にやみつきになりやすいこともわかりました。

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