ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

自分で自分を売り込むくらいの気概を

丸岡啓二

「丸岡触媒」の誕生

 もっとも、私が最初に開発した有機触媒は金属触媒をつくるときに使用していた光学活性配位子とよく似た構造をしていました。長年、金属触媒の研究に取り組んできた経験や知見があったからこそ、有機触媒の開発にも成功したという側面があると思います。

 1999年に私が最初の論文を発表すると、その後、相次いで同じような有機触媒関連の論文が発表されました。私の発表が刺激になったというよりは、世界中で同じ時期に同じようなことを考えていた研究者がほかにも大勢いたということでしょう。

 実際、2021年にノーベル化学賞を受賞したデビット・マクミラン先生は、2000年に「マクミラン触媒」と呼ばれる不斉有機触媒を開発しています。有機触媒という名称は、彼の触媒を販売し出したシグマ・アルドリッチ社が名づけたということを聞いています。

 このシグマ・アルドリッチ社は、私が論文を発表したときにもコンタクトを取ってくれて、すぐに試薬化してくれました。私と共同研究をしていた企業が、このとき「丸岡触媒」と命名して商標登録したので、以後、私のつくった有機触媒は「丸岡触媒」あるいはそれをさらに発展させた「簡素化丸岡触媒」という名称で呼ばれるようになったのです。

次のページ: 強烈なカルチャーショック

1 2 3 4 5 6